第7章 チームのマネジメントと企業組織論

テキスト

第7章では以下の点について学んでいきます。

  • チームビルディングの基本
  • 組織の文化
  • 企業組織論

チームビルディングの基本

ここでは、チームビルディングの基本について解説していく。

チームビルディングのポイント

マネジャーは、自分が管理するチームにおいて、メンバーの一人ひとりがそのポテンシャルを最大限に発揮しつつ互いにその能力を補完し合えるようにする必要がある。

また、チームの中にさらに分割されたチームを設置する場合は、チーム間の関係を調整し、メンバー一人ひとりが仕事に打ち込める環境をつくり、組織全体を活性化させることが必要である。

一般に、チームメンバーの個々の能力を最大限に引き出し、チームの持つポテンシャルを高め、強いチームをつくることを「チームビルディング」という

以下にマネジャーがチームビルディングを実施するにあたって留意すべき点を紹介していく。

チームを機能させるためのポイント

チームは、単に人が集まっただけであればただの「集団」にすぎない。

マネジャーが人の集まりである「集団」をマネジメントすべき「チーム」として機能させるためには、以下の通りいくつか注意点がある。

チームの目標を明確にする

チームのマネジメントにおいては、異なる能力を持つメンバーが目標の達成に向けて協同することによってプラスの相乗効果(シナジー効果)をもたらすことが期待される。

そのため、マネジャーは、メンバーがチームの秩序を乱さずにほかのメンバーとコミュニケーションを図りながら業務を進められるように配慮する必要がある。

そのためには、チームの関心をチームの目標達成という成果に向かわせ、チームの目標を達成するためにメンバーが果たすべき役割を明確化する

マネジャーは、メンバーが自分のなすべきことを明確に把握できるようにする。

メンバーがいつでもチーム全体の仕事を理解でき、自分の仕事がチームの目標といかなる関係にあるかを容易に理解できるように設計することが重要である。

チームの効率性を高める

チームを動かすこと自体に費やされる時間や手間は少ないほどよいといえる。

とくに、業務遂行に関して高い能力を持つメンバーが、事務的なことに多くの時間と手間をとられることのないように留意する必要がある。

チームの意思決定プロセスを強化する

チームを運営する上では、チームとしての意思決定が不可欠である。

チームとして解決すべき課題に対処するために、最も適切なメンバーが意思決定を行い、意思決定の結果を必要とするメンバーの間で共有しなければならない。

マネジャーは、このような意思決定のプロセスの強化に尽力する必要がある。

また、チームとしての意思決定をする前提として、会議を開催しメンバーで討論をすることがある。

その際、個々のメンバーが討論前に持っていた判断や感情、行動傾向は、チームにおける議論や討論を経ることによって、より危険性の高い方向に傾いていったり、逆に用心深い方向に傾斜していくことがある。

上記のような現象は心理学において「集団極性化」と呼ばれる

集団極性化には以下の特徴がある。

  • リスキー・シフト:より危険性の高い積極的な方向に傾斜すること
  • コーシャス・シフト:より用心深い消極的な方向に傾斜すること

マネジャーは、チームにおける意思決定の強化を検討するにあたっては、このような傾向に留意する必要がある。

チームビルディングの基本的視点

ここでは、チームビルディングの基本的視点について解説していく。

グループ・ダイナミクス

チームビルディングには「グループ・ダイナミクス Group Dynamics)」の理解が必要である。

グループ・ダイナミクスは「集団力学」と訳される

とくに社会心理学の分野においては、集団の構成員は、集団から影響を受けつつ集団に対しても影響を与え、単純な複数人の集合ということ以上に集団としての特性的な行動が発生するというメカニズムの研究がなされている。

チームビルディングの観点からは、チームは、様々な思考や興味を持った多様な人々が必要であり、多様なメンバーが構成する動的なエネルギーをマネジメントするという観点が重要である。

メンバーの持つ個性により、業務の領域を幅広くカバーできると同時に、お互いの個性から受ける刺激により新しいアイデアが生まれやすくなる。

この点については第4章第5節「多様な人材のマネジメント(ダイバーシティへの対応)」も参照されたい。

第4章第5節参照
フォーカス

チームを効率よくマネジメントするためには、「フォーカス (Focus)」の理解も大切である。

チームビルディングの観点からは「チームとしての業績目標や、行動指針などに向けてメンバーの力を結集する」ことと理解される

マネジャーは、フォーカスの観点から、メンバーとのコミュニケーションを通じて、力を結集すべき目標や方針を示していく必要がある。

そして、目標や方針をチーム内で共有化し、共通認識とすることが重要である。

これによりチームのまとまりのある取り組みが可能となり、全体の力を結集することができるようになる。

メンバーの強みを引き出し、弱みを無効にする

チームとして活動をする意味は、メンバーの強みを引き出すことにある。

また、それと同時に、メンバーの弱みをなくすことにある。

メンバーが、与えられている機会や強みを十分に発揮し、高いモチベーションを維持しつつ、将来を見据えて行動することができるようにする必要がある。

チームとしての活動をマネジメントするにあたっては、リンゲルマン効果に留意することが有用である。

リンゲルマン効果:メンバーが単独で作業をするよりも集団で作業をする方が1人当たりの作業量は低下し、集団における協同作業においては、集団の人数が増えるほどその構成員1人当たりの作業量は低下するという現象。

社会的手抜き」や「社会的怠惰」とも呼ばれている

マネジャーは、このようなチームにおけるメンバーの心理にも留意し、チームとしてのポテンシャルが発揮されるようにすることが求められる。

変化に適応できるチーム

チームは、ビジネス環境は常に変化していることを理解し、それを前提に行動する必要がある。

現代社会において、組織は、常にビジネス環境の変化に対応して新しい価値を創造するよう迫られている。

変化はチームにとって優位に働くだけでなく、そこで働くメンバー一人ひとりの成長にも役立つ。

過去の成功体験に安住することなく、挑戦を続けることのできるチームとしてマネジメントすることはチームの活性化につながる。

全員が発言しやすいチーム作り

目標達成に向けてチームが協同できる環境を構築するにあたり、参考となる理論にアメリカの組織行動学博士であるエイミー・C・エドモンドソンが提唱した「心理的安全性」がある。

心理的安全性は、組織やチームにおいて、対人リスク(チームメンバーから無知と思われたり悪く思われたり拒絶されたりペナルティを受けたりすること)の恐れを抱くことなく、課題やネガティブな事柄を気兼ねなく発言したり話し合うことができる状態や雰囲気を指す

心理的安全性が高い職場では、「離職率が低い」「収益性が高い」といった影響が指摘されている。

チームにおける心理的安全性を高める方法として、以下のような心理的安全性が高い状態の職場に対して「メンバーが抱く『感じ』」をチームの行動指針として定めることなどが考えられる。

例:

  • 職場での地位や経験に関わらず、メンバーの誰もが忖度なく発言でき、疑問に思ったことも率直に質問できる
  • 改善すべき問題点を率直に指摘してもチームでの対人関係が悪化するといった心配をしなくてもよい
  • 困ったときにリーダーやメンバーに助けを求めることができる

ただし、心理的安全性が高い状態を築くということは、組織の目標や問題解決に向けた必要な発言や行動を、メンバーが恐れを抱くことなく率直に行える状態を構築することである。

単にチームメンバーが仲良く和気あいあいと過ごせる雰囲気の職場にすることが目的ではない。

組織の文化

ここでは、組織の文化について解説していく。

組織文化が果たしてきた役割

組織において、共有されている価値観(何に価値を見出すか)のうち、従業員の行動基準として影響力を有しているものが組織文化である。

具体的には、組織文化は、長年にわたりそこで働く従業員が行ってきた価値判断の集積として結実したものであって、いわば暗黙知の結晶であるといえる。

組織文化は、組織から明示的に表されることもあるが、そうでない場合もある。

組織が明示しない文化であっても、組織の構成員として仕事を続けていれば、いずれは組織の持つ文化を体得し、自然に組織文化に従って行動するようになるのが通常である。

どのような組織文化が構築・維持されているかは、その組織の価値創造や持続的成長に大きな影響を与える。

組織文化の果たす機能

組織の文化が、組織そのものや組織に所属するものに対して果たす機能には以下のものがある。

意思決定や行動についての基準となる

業務を担当するものは、業務上の判断に迷ったときに、組織文化から導かれる基準に従うことによって、解決の糸口をつかめるということがある。

組織文化に従って行動することは、独断で行動することに比べて正しい結果をもたらす可能性が高いといえる

十分成熟した組織文化が構築・維持されていれば、不測の事態や難しい判断が求められる場面で、組織としての強みを発揮することができる。

このように、組織の大半のメンバーが共通の判断基準や行動様式を共有していることは、社会心理学の分野では「集団規範」(group norm)として知られている。

組織としての一体感を持たせる

従業員は、組織に所属する者として一体感のある行動をとることを求められる。

すなわち、従業員の中に、集団規範に従わない者がいる場合に、他のメンバーから規範に従うよう働きかけられることがあるが、このような集団規範への同調を働きかける際の影響力を「集団圧力」(group pressure)または「斉一性の圧力」(pressure toward uniformity)という。

集団圧力は、集団の凝集性(集団の一員であり続けるようメンバーを動機づける力)が高い組織ほど強くなるとされている

また、企業の業績が良好であったり、高度な社会的責任を果たしているという評価を得たりしている企業は、より良い組織文化があると世間から認識される。

その企業の従業員は、評価される組織文化を共有する者としての誇りを感じることができる。

従業員の間にこのような雰囲気が醸成されれば、従業員は、仕事に積極的に取り組もうという意欲が掻き立てられる。

組織文化の弊害

上記とは反対に、悪しき組織文化が蔓延し根付くと、その組織文化に基づく従業員の行動や判断により、最悪の場合には企業の存続さえ危ぶまれることとなる。

例:消費者の利益や環境への影響を無視して企業利益の追求を最優先に考えるという組織文化が根付いている場合、レピュテーションリスク(評判リスク・風評リスク)にさらされて企業の社会的信用は著しく損なわれる

組織文化は、社会の利益に資する、社会と共存できるように醸成することが重要である。

また、マネジャーは、このように醸成された組織文化を、コミュニケーションを通じて部下に浸透していくことが大切である。

企業組織論

企業がいかなる組織を構成するかは、経営資源の効率的な活用のみならず、人材の育成といった観点からも非常に重要である。

ここでは、企業組織に関する様々な考え方を紹介する。

組織の7S

組織の7Sとは、企業戦略における7つの経営資源の関係を示したもので、組織のあり方やその運営を検討していく上での1つの指標とされており、戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)によって提唱された。

この7Sは下図の通りハードのSとソフトのSに大別される。

組織の7Sの図解

これら7つの経営資源は、それぞれが独立した存在ではなく、相互に影響し補強しあっているとされている。

組織のあり方を検討したり組織改革を考えるにあたっては、これら7つの経営資源のバランスなどを考慮することが重要である。

バーナード組織論

バーナード組織論は、アメリカの経営学者であるチェスター・バーナード(Chester Barnard)によって提唱された組織経営論である。

バーナードは、その著書『The Functions of the Executive(経営者の役割)』の中で、組織が有効に成立するための要素を挙げ、それらを備えた組織を「公式組織 (formal organization)」と呼び、公式組織を「2人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力の体系」と定義した。

つまりバーナードは組織を公式要素の3要素(下図参照)を備えた2人以上の人々の間の関係ととらえている。

例:仕事を分割して割り振ったり、人と仕事との関係を調整統合すること

バーナード組織論の図解

組織構造の種類と特徴

「組織」には様々な構造が考えられる。

ここでは以下の組織の意味と特徴を整理する。

  • 機能別組織
  • プロジェクトチーム型組織
  • 事業部制組織

機能別組織

機能別組織とは、仕事の種類ごとに組織を構成して組織全体の構造を決定する組織構造である。

職能別組織・技能別組織と呼ばれることもある

機能別組織は、通常「ライン」部門という企業の目的を直接遂行する部門と、「スタッフ」部門という、ライン部門が効率よく業務遂行できるように指導、援助、助言をする部門(人事・経理・総務など)によって構成されている。

機能別組織は、多くの企業で採用されている組織形態であるといえる。

以下のようなメリットがある。

  1. 従業員がどのような業務を行うべきか(役割分担)を容易に理解できる。それにより、部門間での仕事の重複が避けられる
  2. 従業員は、その職能に関する知識や技能を得ることによって、専門性を高めることができる。
    それによって業務の効率性が上がり、また成果に直結することが多いため、マネジャーが部下のモチベーションを高め、または部下を育成することも比較的容易であると言える
  3. 管理者に意思決定権が集中するよりも、職能ごとに従来から行われてきた業務方法等を改善する活動も進めやすい

一方で、機能別組織には、急激な市場の変化や各部門が連携し企業を挙げて取り組むべき業務には対応しにくいということも指摘されている。

すなわち、機能別組織は、各部門に配属された従業員が、企業全体の方針や目標に沿って仕事を行いにくいという側面がある。

また、部門間の連携が容易ではなく、組織が硬直的で柔軟な対応が困難であるという側面もある。

これらの要因により、全社を挙げて、これまで取り組んだことのない業務方法を試みることなどは実施されにくくなる。

プロジェクトチーム型組織

プロジェクトチーム型組織とは、異なる技能、知識、ビジネス上の経験を有し、本来は異なる分野に属する者が、特定の仕事を果たすために構成される組織(プロジェクトチーム)をいう。

固定的で安定的な機能別組織と異なり、特定の目的を達成するために、機能別組織に所属する従業員からメンバーを選出して、一時的に組織されることがある。

タスク・フォース)」と呼ぶこともある

通常、少人数で、プロジェクトまたは顧客単位で編成され、あらかじめ定められた目的を達成すると解散することとなるのが一般的である。

プロジェクトチーム型組織では、チームリーダーが選任される。

チームリーダーは、仕事の進捗度合いに応じて、必要な人的・物的リソースを調達する。

プロジェクトチーム型組織には、次のようなメリットがある。

  1. 機能別の組織体制では対応できない市場動向の劇的な変化に対応することができる。
  2. チームメンバーは、チーム全体の仕事と自分の責任を把握しやすいため、個々のチームメンバーがそれぞれ責任感を持って仕事を進めることが期待できる
  3. 自社製品やサービスにイノベーションを起こすことができる。新しい方法やアイデアを受け入れ、事態の変化にも柔軟に適応できる

一方で、以下のようなデメリットもある。

例えば、一時的に組織されたものなので、安定性に欠け、経理や人事の業務が重複するため経済的ではない。

また、チームメンバー単位で専門分野が異なるため、仕事の割り振りや人間関係を調整するために絶え間ないコミュニケーションと、必要に応じ随時打ち合わせの場を設けるなど、チームの内部管理を継続的に行うことが不可欠である。

プロジェクトチーム型組織の構築・運営には、チームリーダーの選定、メンバーの構成はもちろん、ほかの部門のマネジャーからの支援や経営層からの権限移譲が重要となる。

マネジャーは、チームリーダーを選定して、プロジェクトチームの目的を伝え、その目的を達成するために必要な様々な支援を実施することが必要となる。

事業部制組織

事業部制組織では、組織はいくつかの独立した事業部に分割される。

事業部は、自立した組織としてビジネスを実践し、1つの事業部が業務プロセスの最初から最後までを担当する。

そのため、事業部単位で意思決定権限や事業の執行権限を持つことが容易になる

このように、各事業部はそれぞれ売上や利益といった業績に責任を持って取り組むこととなる。

事業部制組織には以下のようなメリットがある。

  1. 成果に対する責任が明確である。事業部内で仕事をする人々は、その事業部が直面する課題を理解することが容易であるといえる
  2. 事業単位における意思決定を容易に行うことができる。事業部のマネジャーは、その事業によって得られる成果を最大化するために最適な事業部を構築することが可能である
  3. 各事業部の成果に着目することから、事業部の間で成果についての競争が始まり、企業全体として成長することが期待される
  4. マネジャーは、事業の業績と成果に責任を負うこととなり、将来その企業の経営を担うマネジャーが育ちやすい

ただし、事業部制組織においては、研究開発や設備等に関する投資が複数の事業部で重複してなされたり、経営資源の各事業部への配分の調整等が難航したりするほか、事業部門ごとにいわゆる「縦割り」の組織となり事業部間の共同が行われにくいというデメリットがある。

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