第5章 上司・外部とのコミュニケーション

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第5章では以下の点について学んでいきます。

  • 上司とのコミュニケーション
  • 外部とのコミュニケーション
  • 対外的な交渉

上司とのコミュニケーション

マネジャーは、部下に業務を支持しその結果の報告を受けると同様に、上司と適切なコミュニケーションをとり、適宜諸活動の実施状況を上司に報告しなければならない。

しかし、マネジャーの立場から想定される上司は、一般的には、社会的地位が高く、組織の中でも経営層あるいはそれに準ずる立場にあり、組織の内外で多忙な業務を行っている人である。

そのため、マネジャーが上司の繁忙度を気にするあまり、報告・連絡・相談(報連相)が遅れてしまうことがある。

その結果、例えばアクシデント情報の報告が上司に届かず、場合により他の部門や、組織全体の経営にも影響を及ぼすことがある。

マネジャーが上司とのコミュニケーションを図るためには、以下の点に留意して適切な報告や相談を実行することが重要である。

報告や相談は早めに、とくに事故情報は迅速に報告すること

多忙な上司だからといって、業務報告が遅れることの正当事由にはならない。

上司の業務状況にもよるが、タイミングを見計らって積極的に時間を調整してもらい、業務報告を怠らないようにすることが大切である。

報告を受けることによって、上司にはマネジャーに対する安心感が生まれる。

とくに、事故情報を上司に申告することは委縮しがちであるが、上司の立場としては自分で対応策を講じ、対処できるうちに報告を上げてほしいと思っているものである。

反対に、マネジャーがアクシデント情報を迅速に上司に報告せず、自己の手元にとどめた結果、企業の一大不祥事に発展したというケースは枚挙にいとまがない。

多忙な上司だからといって、業務報告が遅れることの正当事由にはならない。

上司の業務状況にもよるが、タイミングを見計らって積極的に時間を調整してもらい、業務報告を怠らないようにすることが大切である。

報告を受けることによって、上司にはマネジャーに対する安心感が生まれる。

とくに、事故情報を上司に申告することは委縮しがちであるが、上司の立場としては自分で対応策を講じ、対処できるうちに報告を上げてほしいと思っているものである。

反対に、マネジャーがアクシデント情報を迅速に上司に報告せず、自己の手元にとどめた結果、企業の一大不祥事に発展したというケースは枚挙にいとまがない。

報告は迅速に実施する必要がある。

報告は可能な限り面談により実行すること

マネジャーが上司に報告する案件は、複数あることが通常である。

また、マネジャーが上司に報告する案件は、経営や人事上の問題等が含まれる頻度が高くなる。

このような事情を前提にすると、報告はメールで行うのではなく、たとえ短時間であっても面談による報告を心掛けるべきである。

面談により、報告の場面で即座にマネジャーの気が付かなかった組織上の問題点や、対外的な対応策についての指摘を受けることが可能となる

報告の際には、必ず相談事項を明確にすること

マネジャーが上司に報告する場合、単に結果だけを報告するだけではなく、その報告に関連して上司に相談すべきことや、支援をしてほしいことをあらかじめ用意しておくべきである。

上司だからこそ処理できる問題点や、対外的な問題点がある

多忙な上司に時間を割かせるわけなので、面談時に上司に求めるアドバイスや、上司に対応してほしい項目を要領よく相談できるように準備をしておくことが大切である。

外部とのコミュニケーション

マネジャーは、自社以外の人々とコミュニケーションを持つことがある。

部下やチームを導く役割と同じように、外部の人との関わりは重要である。

マネジャーは、事故の業務に関係する取引先や、業界団体や監督官庁の担当者、税理士や経営コンサルタントなどの専門家、関係する官公庁の担当者など、多種多様な人々と関わりをもつ。

外部とのコミュニケーションにおけるマネジャーの役割としては以下3つがある。

  1. 外部との人的ネットワーク構築の役割
  2. 外部への情報発信者
  3. 対外的・対内的な情報を伝達・調整する役割

それぞれ解説していく。

外部との人的ネットワーク構築の役割

マネジャーは長い時間をかけて外部に人的なネットワーク(いわゆる「人脈」)を構築し、チームに協力してくれる人とのつながりをつくり上げる役割がある。

外部への情報発信者としての役割

マネジャーは、外部に対し、事故のチームを正式に代表して情報を発信する役割をもつ。

マネジャーは、外部のネットワークを利用して、自己のチームの活動に支援を取り付けるために、適宜収集した情報を、許された範囲内で外部に発信する。

マネジャーはチームを代弁し、チームが目指す目標達成のために根回しをし、チームの活動の成果を外部に周知する。

対外的・対内的な情報を伝達・調整する役割

外部とのコミュニケーションは、重要な情報を収集し、目標を達成するのに必要な外部の協力を得るための重要な要素である。

また、マネジャーは、対外的なコミュニケーションを通じて得た情報を内部のチームに伝える役割を担っている。

ただし、マネジャーは、外部情報をそのまま伝令のように伝えればよいわけではない。

外部の情報がチームの目的にどのような影響を与えるか、不必要な情報はないかといった整理・調整をして、外部情報によりチーム内に無用の混乱をきたさないよう注意する必要がある。

また、それとは逆に、外部情報を全くチームの中に伝えなければ、部下は、目標達成に必要な情報を得ることができなくなる。

対外的な交渉

マネジャーは、自己のチーム外の組織との間で、チームを代表する者として交渉する役割を負っている。

交渉とは、当事者がお互いの目的や要求を実現させる意図のもとに、相互の主張や説得により、妥結点を見出すための過程をいう。

いわゆる交渉術については、古くから様々なテクニックが知られている。

ここでは、交渉にあたって、基本的な考え方や留意すべきことを中心に紹介する。

対外交渉の基本的な考え方

マネジャーが、対外的な交渉をするにあたって、何よりもまず心得ておかなければならないことは、相手との信頼関係を築くことが大切であるということである。

交渉は、当事者双方の説得の繰り返しである。

主張や説得を相互に繰り返すといっても、相手が自分の主張を理解しようとする意志を持てるような信頼関係がなければならない

次に、交渉での主張や説得は、相手が理解できる論理性を持たせることが必要である。

当然のことながら、感情論や論理が飛躍した主張では、相手の納得は期待できない。

交渉は、ある種の妥協である。

したがって、相互に主張し歩み寄れるところは妥協して、初めて相手の納得する妥協点を見出すことができる。

交渉は、自分の主張を曲げないで、強引に相手に受け入れさせることではない。

相手を屈服させ、従わせることは支配であり、命令となってしまう。

交渉と似た言葉

折衝:利害の異なる者の間で相互の要求を調整し妥協点を見出すための話し合い

※交渉にもこのような意味があるが、交渉は、必ずしも意見や利害の対立がある場合に限られず、広く話し合う場合を含む

渉外:対外的な交渉・折衝をすること。単に外部との連絡をとることも「渉外」と呼ぶことがある

談判:折衝よりも厳しい対立に決着をつけるというニュアンスを伴う

交渉にあたっての留意点

実際の交渉に臨む際には、以下の点に留意してほしい。

自分と相手の「主張」や「要求」を整理し、相互の共通項や相違点を明確にする

あらかじめ相手の主張がわかっていれば、この作業は比較的簡単である。

相手の主張に対する反論や、条件提示のヒントも見出しやすいといえる。

しかし、交渉は生き物である。

当事者の相互の主張が開始して、初めて論点が明らかとなり、それも交渉の中で刻々と変化していくことが通常である。

このような交渉過程の中においても、たえず冷静に論点(争点)を意識し整理し続けることが、交渉内容の明確化につながり、冷静な話し合いが可能となる。

交渉相手を理解する

交渉相手の人間は、自尊心や自負心の強い人もいれば、細かいことにこだわる人もいる。

交渉相手の特性を理解して、その人に合った説得をすることも大切なことである。

例えば、相手が知識豊かで自負心が強い人には、当方の主張の理由を理論的に説明し、自分で判断するように導くとよい

交渉の相手方(説得される側)が、説得する側を信用していないときに、説得内容とは逆の意見をいただいてしまう現象をブーメラン効果(boomerang effect)という。

権威主義的な人には、当方の主張について、公的機関や学識経験者などの見解も添えて丁寧に説明すると、相手も納得感が生じる。

交渉で役立つ心理的効果の知識

  • スリーパー効果:情報源に対する信頼性の忘却スピードの方が情報内容そのものの忘却スピードより速いことから生じる効果。信頼性の低い情報源との間のコミュニケーションであったとしても、時間の経過とともに、その「情報源の信頼性が低い」というマイナスの効果が薄れ、コミュニケーションの内容そのものの記憶だけが印象に残るというもの。これを交渉に当てはめると、たとえ交渉相手との信頼関係が薄い場合であっても、そのマイナス効果はコミュニケーションを継続することによって徐々に薄れ、逆に交渉内容の理解度が深まる。
  • 返報性の原理人から利益や厚意を受けたとき、その利益や厚意に報いるべきであるとの感情を抱くという心理作用を指す。例えば、交渉の場面で、当方として許容できる範囲で、相手方に対して譲歩することにより、むしろ当方に有利に交渉を展開できることがある。
  • 単純接触効果(ザイオンス効果)対象となる物や人物への接触回数が増すと好意度も増加するという心理的効果。この心理的効果を利用して、交渉を円滑に進めるために取引先との接触回数を増やすことで好意度の向上に努めることは有用と考えることができる。ただし、相手方が当方に悪印象を抱いている場合は、逆効果になり得るので注意が必要である。

ポジティブ情報だけではなくネガティブ情報も開示する

交渉相手とは、信頼関係が大切である。

相手に対する交渉材料の提供について、あえて「提案には、〇〇というマイナス要素もある」といったようなネガティブ情報を付け加えることは、客観的資料に基づく冷静な交渉が可能となり、相手が信頼する基礎となる。

交渉に役立つ様々な考え方

米国では、様々な交渉術が知られている。

ここでは、米国流の交渉テクニックの主なものを紹介する。

Low ball・High ball(ローボール・ハイボール)

相手が受け取れないようなボールを投げて、次に相手がかろうじて受け取れるボールを投げることで、自分のペースで交渉をすること。

相手が到底承諾できないような厳しい条件を提示し、徐々に条件を緩めるという交渉テクニック。

Good Cop and Bad Cop(良い警官と悪い警官・怒り役となだめ役)

2人でチームを組み、一方が厳しく対応し、他方が優しく対応する「北風と太陽作戦」である。

米国で使われる交渉テクニックの古典的なものの1つ。

例えば交渉の第一次担当者を部下にさせて、相手に対して強気の交渉を指示する。

その交渉が暗礁に乗り上げたところで、マネジャーが登場し、優しく相手の言い分も受け入れる姿勢を見せるという交渉テクニックである。

Weigh Options (Chicken)(二者択一を迫る)

この条件を承諾するか、承諾しないか、承諾しなければ取引を中止すると二者択一を迫るテクニック。

基本的には、立場に強弱のあるビジネス交渉の場面では、よく見られる光景だが、状況によっては交渉自体がとん挫する危険性もある。

Bogey(幽霊のようなつかみどころのないもの、転じてそれほど価値のないものを、価値のあるものと装うこと)

例えば、交渉条件が客観的には有利でないものを、あたかも非常に有利であるとして交渉することをいう。

このような交渉に対抗するには、相手方の条件等を客観的に評価できる情報を持つことが必要である。

そのほか、様々な交渉術が使われているが、今日における米国での交渉の基本的考え方は、あまり技巧に走らないで、信頼関係を築き相互に満足できる交渉スタイルが推奨されてきている。

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